間に合ったよ。   

朝。

なんか、うるさいなぁと思ったら、携帯電話の着信メロディが鳴り響いている。

うるさいなあ。

無視してみた。



それでもまだ、鳴り響く。

うるさい。

鳴り響く、鳴り響く。

あんまりうるさいので、出てみた。

「寝てた?」

あたりまえだろう。

「かけなおしたほうがいい?寝起きはほら、低血圧で機嫌が・・・」

もう悪い!

寝ぼけた頭で会話にもならない会話をしながらテレビをつけた。

あ。

箱根駅伝の復路じゃん。

すっかり忘れていたよ。

起こしてくれてありがとう、ちょっと好きになった。

せっかくかけてきてくれた電話だけど、それどころじゃないんだな。

だって、テレビではもう大磯越えて、平塚中継所でタスキを渡していたよ。

慌てて寝起きのまんまの格好にぶかぶかコートをすっぽりかぶって

寝癖の頭にはニットキャップをかぶり、エスキモーと化したわたしは

大ちゃんとマーやんを連れて、家を出た。

箱根駅伝って、テレビで見るより、ずっと、ずーーーーーーっと速いんです。

それをわたしは、身にしみて知っているのだよ。

身・に・し・み・て。

わたしはかつて過去3年間、平塚花水川中継所、小田原鈴廣かまぼこ中継所

大手町スタートラインなど、幾多の中継地点に1日中待機させられた経験あり。

広告代理店営業新人時代、箱根駅伝のCM媒体を買っていただいたお客さんと

現場立会いっていうのをしなきゃならなかったわけです。

元旦からホテルに泊まりこみ、朝の3時頃にたたき起こされて、ロケバスにて

中継地点に連行される。

そして、へんなトランシーバーみたいのを持たされ、寒い寒い吹きっさらしの

あの中継所で、「そろそろ先頭来まーす!」とか大声張り上げながら

タスキを渡したばかりの選手に某クライアントさんのミネラルウォーターとか

手渡したり(商品のパッケージがテレビに映るような角度で渡すのがコツ)、

某クライアントさんが最新の通信機器と印刷機器で出力したばかりの、

いま走り終えた選手の区間記録用紙を、ぶっ倒れてる選手に渡したり

沿道にいるたくさんの人々に、その記録の用紙を手渡してまわったり

テレビに映るようにヒラヒラ舞うのぼりを立てたりetc,etc。

そんなことを3年も、3年も、やらされたのですよ!

あの寒さは、忘れられない。

3月のパリの水シャワーより、寒かった。

2月のニューヨークの135年ぶりの大雪の日より、寒かった。

わたしもともとバックパッカーだから、寒いのとかなんとか耐えられると思ったけど

あの寒さは、心まで凍りそうだった。

だから箱根駅伝大嫌い。

かというと、意外と好き♪

誰にでも必死の時代がある。

というけれど。

まさにあの頃は必死だったな。

花水川中継所で、最後尾の選手が通過してほっと一息ついてようやく

当時つきあっていたロンドン在住の彼に、電話ボックスから明けましておめでとう

って電話をかけて思わず涙がぽろぽろ流れたり。

コピーライターになりたいのに、なんでわたしこんなトコでこんなコトしてんだろって

大手町スタートラインから逃げ出したくなったり。

でも、自分にとっていい時代だったなと思える。

まあ、こんな経験してるコピーライターも少ないだろうな。

矢沢永吉ですよ、成り上がりですよ。

あ、ちっとも成り上がってないところが悲しい。

でも。

箱根駅伝を応援するのは、なんていうか、あの頃の自分を思い出して

また元気を出してがんばろう!っていう、自分へのエール、

みたいなところがあるかな、いまだに。

だって必ず思い出すもん、あの寒かった日の、電話ボックスの冷たい受話器。

しゃべってるうちに、受話器まであったかく溶けていくような気がした。

がんばったねって言ってくれた当時の彼の声。

と、回想はこれくらいにして。

慌てて家を出ました、マーやんは斜めがけのバッグに押し込み

大ちゃんをチャリ引きして、湘南工科大学近くの交差点へ。

すごい人!人!人!

そしてなぜだか、犬!犬!犬!

大ちゃんやマーやんを連れて行くのは、人ごみに慣らすいい機会だからね。

てきとうな場所にチャリを停めて、最前列へ。

来たよ、来たよ、白バイ、中継車!

隣の警備のお兄さんのトランシーバーでは、「先頭来ます!」との声。

うほ、うきうきするね。

大ちゃん、マーやんは、わけもわからず目が点。

おかまいなしのわたし、隣にはなぜだか近所の犬友だち。

あれ?いつの間に。

先頭が来て、2番が来て・・・来ないじゃん、あたしの母校。

おいおい、がんばってくれ。

ようやく、わたしの母校、相も変わらずもっさりしたえんじ色のユニフォーム。

がんばれー、がんばれー、がんばれー。

一通り叫んだら、あっという間に通過しちゃった。

でも、まだ楽しみがあるのだ。

わたしは母校がふたっつ。

じつはわたし、大学中退歴アリでして。

ひとつめの大学も、応援しておこう、1年間はお世話になったし。

あの大学では、バトミントンを覚えたんだよね。
(体育の選択で無理やりやらされただけだけど)

来た来た来たー、がんばれーい。

よし、ふたつの母校を応援できたので、最後尾を待たずに退散。

だって、混むんだもの。

そのままTully'sに移動して、朝のコーヒー。

そして、すっかり忘れてた起こしてくれたヒトに電話。

大興奮で、この臨場感を伝えてあげたにもかかわらず、

寒かったでしょ、とかいうお寒い回答。

ばかやろーう。

あたしは充分、アツくなってるよ。

なのに。

「だって、俺の母校出てないし」だって。

なんて貧しい心なんだ。

箱根駅伝は、わたしの青春なのだよ。

やだね、何事にも感動がなくなって。

男の更年期かしら。

あったまきたので、更年期なんてはるか先の、大学の後輩に電話。

「俺もこっちでゴール待ってるんすよ~!」

やっぱり?やっぱり?でしょ?でしょ?

やっぱ、こういう感動をわかちあえる人じゃなきゃ、だめだねっ。

「なにごとも、分かち合えなくなったらおしまいだね。」

と、いきおい混んでメールして、駅伝選手同様に、わたしもスパートかけちゃったよ。

いいのか、これで。

まいっか、たのしかったし。

駅伝に元気をもらって、今年も仕事はじめ、がんばろう。
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by jrt-mona | 2007-01-04 02:41 | DAYS.

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